[親不孝者の祈り:]
親不孝者の祈り
大学2年の時、母が死んだ。 長い長い癌との闘病生活が続き、いつのまにか彼女の死は、家族の中で当然のことになっていた。 臨終間際、医者に「お母さんの手を握ってあげてください」といわれ、羞恥心を覚えながら手を握った。 もしかしたら、僕は照れ笑いをしていたかもしれない。そのときの自分に対する嫌悪が、苦い胃液が口中に広がるように、時々、頭によみがえる。 未だに親不孝を続ける僕は、父が元気で暮らせますように、毎日心の中でお祈りをすることにしている。