[ペルナンブーコの女:]

ペルナンブーコの女

彼女は火のような女だった。 かっとなって、男の後ろから石で殴り血だらけにしたことや、姉の指を食いちぎりかけたこともあった。
一度、狂気の炎が燃え始めると、彼女自身でさえもどうすることも出来なかった。
そんな女ではあったが、離れると不思議にあいたくなった。
何度か大喧嘩をしたことがあった。しかし、いつも彼女の狂気を上回る狂気を自分の中に生み出せず、結局は黙ることで対抗するしかなかった。
喧嘩の後、さめざめ泣きながらあやまる彼女を見ていると、人間の業を感じずにはいられなかった。
彼女の狂気を初めてうちやぶったとき、それは別れの時であった。

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