肥育実験の開始

 さあこれから、いよいよと言う段階になり、このページも一時止まったのかと言う不安を抱かれてしまいましたが、これは、ブラジル国内の法律やワシントン条約などの色々な問題が重なり合い、我々の実験が公式に文章として発表出来ないでいた事が原因であり、実験そのものの中止、停滞とは無関係であり、それどころか、気の早い日本の青年が大学を卒業して、アルバイトして、アマゾンの魚、特にピラルクに興味がある。是非、養殖場を見せて研修させて下さいと、言わんばかりに、我が家の門を叩いたのは、6月29日だった。それ以後、現在に至るまで無償で働き研修している。ビザの関係上3ヶ月しか居られないのを10月3日の測定もやらせてくれと意気込んでいる。その後、彼は、野生のピラルクを見る為にアマゾンへの無銭旅行に旅立ち、日本帰国は何時になるか。みごとアマゾンのワニ、野獣の餌食になるか?誰にも判らないが、予定は来年4月から6月頃には帰国したいとのこと。(青年こと、二葉 春樹さん連絡先 〒340-0022 埼玉県草加市瀬崎町 626-303 TEL:0489-29-4805)

ピラルク養殖場内と突如現れた日本の青年

 何はともかく、やっと正式に公表できる型として、8月5日に、60日間の中間育成を終了させた。50匹のピラルク稚魚の肥育養殖が始まりました。(ここで言う中間育成とは、本来この種は生きた魚を餌として食べている。そこで、養殖用に家畜化するために、一般配合飼料でも食べるように訓練する期間の育成を言う。)この8月5日の正式スタート以前にも、文章で公表できないだけで、この間こそ、この最も重要な稚魚の餌付けについての実験研究が繰り返されていた。そしてこれは、未だにベストと言う方法は見つけられていない。今後、肥育と餌付けは同時に研究していくことになるのだが、ここで、我々が目標とするピラルク養殖の基本的思想を明記しておきたい。

 1)自然の生態系を壊さない
 2)自然破壊、公害をまきおこさない。
 3)化学薬品、ホルモン剤等は、一切用いない。

と言うものであり、それに合わせた養殖設備、養殖方法を用い、誰にでもたやすく出来、かなり高い利潤を得られる養殖形態にする事である。決して利潤中心的な、現在多くの批判を浴びるタレ流しによる養殖ではない。

 一応ここでは、簡単に閉鎖循環式高密度養殖(完全閉鎖式ではないが)と言う方法であるとだけ報告しておきたい。長々前文にて紹介したように、この方法で、容易に養殖できる最適種にピラルクがあると信じている。更に現在は、餌付け訓練を60日間の中間育成にて行なっているが、今後さらに効率の良い方法、餌等の開発にて、この期間を短縮していけると考えている。

 では、ここで今回から始まった公式記録として発表された記録を報告しよう。(サンパウロ州立水産研究所共同)

肥育実験開始 8月5日
 平均体重 132,9g(最高185g 最低90g)
 平均全長 265,8mm(最高320mm 最低220mm)

8月5日:60日間の中間育成(餌付け)終了後、肥育養殖開始時の稚魚。合計50個体、平均体重132,9g、平均全長265,8mm

第一回体側時 9月5日
 平均体重 378,6g(最高595g 最低130g)
 平均全長 355,0mm(最高420mm 最低260mm)

9月5日:肥育養殖開始32日目。50個体、死亡ゼロ、平均体重378,6g、平均全長355,0mm

肥育期間中の平均水温 27℃(最高28℃ 最低24℃)

全体増肉量 12285g(固体当たり245,7g)

総合投餌量 17610g

全体増肉係数 1,43(1,43kgの餌で1,00kgのピラルクが生産されたと言う事)

水質変化、水交換率等については、公式報告書には報告されているが、ここでは省略する。

 この記録で診る限り、驚異的な成長である事が判る。特に増肉係数1,43と言うのは、これだけでも驚異であるが、この総合投餌量とは、養殖担当者が最善の注意をしているとは言うものの、残餌もあり、一度投餌されたものは、幾ら残されても、その日の投餌量に計算されている(つまり投餌されたものが全て食べられているわけではない)。
 更に、今回の実験では、特別の餌ではなく、ごく一般に使用されているブラジル国内市販の配合飼料(祖タンパク40%)のもので、ブラジル国内ではまだ魚養殖は盛んではなく、配合飼料の質も最高とは言い難いものである。(実際、日本に比べかなり質が悪い)

 何はともあれ、一回だけのデータで有頂天になるのも、がっかりするのも、気が早すぎる。今回のを第一ロッチとして、第二ロッチ、8月28日に39匹、同様に餌付けされたピラルクの肥育が始まった。

開始時
 平均体重 126,45g(最高165g 最低75g)
 平均全長 264,7mm(最高300mm 最低230mm)

第一回目より多少痩せ型であるが、ほぼ同サイズである。このロッチも含め、次回10月3日が第二回体側日であり、この後データをまとめ報告していく。

ピラルク養殖企画メンバー:左から、養殖技師、著者、サンパウロ州立水産研究所所長、同技師、同技師

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